マスタリングについてのお話(1)

今まで僕はTsukuba DTM Lab.にて1年と少しの間マスタリングを担当させていただきました。ここではそのときに得た経験をお話しさせていただきます。

  1. マスタリングとは何か
  2. マスタリングはなぜ必要なのか
  3. 具体的な作業の内容

1. マスタリングとは何か

マスタリングとは、正しくはプリマスタリングと言われる作業です。ミックスダウンされた音源の音質、音圧の調整、曲間の調整を行う作業ですが、とても奥が深く、かつ作曲やミックス作業とはまた異なった作業です。音楽配信においては欠かせない作業です。 ミックスとマスタリングはよく混同されますが、ミックスとは一つの楽曲を作る作業で、複数のトラックのレベルや音像の調節をするものです。対してマスタリングはすでに完成した楽曲に対して行う作業で、ミックスの段階では施せないような処理をする作業です。一般的にマスタリングで行える作業には限界があるので、曲のパートレベルでの編集が必要になった場合にはミックスの段階に戻る必要があります。ミックスでうまくいかなかったがマスタリングでうまいこと編集できるだろう、といった考えは通用しないので、ミックスで曲を作り込むことが大切です。

2. マスタリングはなぜ必要なのか

マスタリングの存在意義は一つのアルバムに対して一貫性を持たせることと、音楽配信をする準備を整えること、全体的な音圧をあげることにあります。 特に一貫性を持たせる部分が重要であり、音圧レベルや曲の広がり具合をある程度一定に近づけ、通し聞きした時に違和感なくすることが目標です。 音楽配信をする準備とは、音楽のメタデータの書き込みや、要請されたフォーマットへ変換する作業などです。 (音圧をあげることに関しては批判があり、音圧をあげることは楽曲のダイナミクスを失ってしまうことにつながるのでやめるべきだという意見がありますが、日本においては未だに音圧至上主義的なところがあります。)

3. 具体的な作業の内容

ここまでマスタリングとはどのような作業であるかを書きましたが、具体的にどのような作業であるかをかいつまんで説明します。 まず、DAW上にマスタリングをする楽曲全てと、参考にしたい市販の音源を配置します。次に、全ての楽曲に必要なプラグイン(コンプレッサー、リミッター、EQ、アナライザー等)を挿入します。参考音源を聴きながらそれらのプラグインのパラメーターを調節し、通し聞きした時に違和感なく聞き通せれば、全ての音源を指定されたフォーマットへ書き出します。書き出した音源を手持ちの音楽プレイヤーなどで聞き(できれば複数)、問題がなければマスタリング作業は終了となります。

次回の更新では、それぞれのプラグインの説明を簡単にします。